え!?ありえないっ。結婚内祝いに離婚届?

内祝い

これは、わたしが友人からもらったお祝い返しの話です。

わたしと友人は、大学時代からの親友でした。だから彼女が結婚すると聞いたときは本当に嬉しく思いました。

ですが、結婚相手を聞いてびっくり! それは、同じく大学時代の友人でした。

わたし達三人は同じサークルだったのですが、当時から彼女と彼は仲が悪いことで有名だったのです。顔を合わせるといつも喧嘩ばかりで…。

まさか彼と結婚するなんて、と正直に言うと、彼女は「人生何があるがわからないよね」と笑っていました。

わたしは結婚式で司会を務めることになり、ふたりと打合せをすることになりました。

「それで、カクテルドレスはどんなのにしたの?」

「まだ決めてないんだけど、赤にしようと思うの」

彼女が言うと、新郎である友人がすぐに口を開きます。

「はあ? 青にするって話になっただろ」

「それはあなたの希望でしょ? わたしは赤がいいの!」

「お前に赤は似合わないって」

大学時代のように口喧嘩を始めたふたりを見て、わたしは密かに不安になっていたのでした。

そして、式は何とか和やかに終わり……。

後日、ふたりから「返し」と記載された封筒が届きました。

(引き出物はもらったんだけどな……)

不思議に思いながら封を開けると、商品券と、何と、署名済みの離婚届けが入っていたのです。

(え!?)

喧嘩ばかりしているふたりの姿が脳裏をよぎり、まさか……と思いながら同封されていた手紙を開きました。

「先日はありがとう! いろいろとフォローしてくれたお陰で、無事に結婚できました(笑) でも、仲が悪いこと評判だったわたし達が結婚しちゃって、きっと心配してくれてるよね? 確かにわたし達は喧嘩ばかりだけど、喧嘩した後に『もうしょうがないな』って笑って言えるんだよね。それって、幸せなことだと思うんだ。このお礼の手紙に同封した離婚届を預かってもらえませんか? もし、『もうしょうがないな』って言えなくなったときが来たら出してください」

彼女からの手紙を読み終わったわたしは、結婚式のとき、カクテルドレスがラベンダー色だったことを思い出しました。

赤を希望していた彼女と青にしたかった彼が、「しょうがないな」と言いながら、ふたりの希望の色を混ぜたラベンダーを選んでいる姿が想像できました。

あれから数年。仲良く喧嘩するふたりを見ると、温かい気持ちになります。

ふたりから預かった離婚届は、ずっと引き出しの奥にしまわれ、出す必要はなさそうです。