結婚する私たちが贈る、両親へのサプライズプレゼント
結婚する二人が両親に贈ったサプライズプレゼント。
そんな素敵なエピソードをご紹介したいと思います。
わたしが彼を両親に紹介したとき、はしゃぎながらお菓子をすすめる母とは逆に、父は最低限のことしか話さずテレビをじっと見ていました。
「もしかして、俺、気に入ってもらえなかったかな」
家を出るとがっくりと肩を落とした彼に、わたしは苦笑いしました。
「多分、わたしのことに興味がないんだと思う」
「え?」
「わたしとお父さん、血が繋がってないんだよね」
母が父を連れてきたのは、わたしが高校生のとき。
突然できた「父」に思春期をすぎたわたしは戸惑うことはなく、ただ懐くこともできませんでした。
それは、父も同じだったと思います。
父と距離をつめられないまま、わたしは大学進学を機に家を出たのです。
わたしと彼が婚約の報告に行ったときも、父はあまり目を合わせませんでした。
「式はチャペルで挙げるから、ヴァージンロードを一緒に歩いてもらうことになると思う」
「そうか。わかった」
そう一言だけ答える父。
「お前、少し残念に思ってるんじゃないか? お義父さんのこと」
「え?」
「いや、俺はこれを機にふたりの距離が縮まるって期待してたんだ」
婚約者の彼の言葉に驚きつつ、わたしはどこか図星でした。
(でも、父はわたしの結婚のことなんてなんとも思ってない…)
しかし驚くことがありました。数日後、母と電話をしていたときのこと。
「そういえば、お父さん捻挫しちゃったのよ」
「大丈夫なの?」
「すぐ治るらしいんだけどね。ヴァージンロードを歩く練習で足をくじくなんて恥ずかしいわよねぇ」
(ヴァージンロードの練習…?)
電話をきったときにこみ上げてきたのは、父への感謝でした。
(実は、すごくわたしのことを想っててくれたんだ…)
そして、あることを思いつきました。
結婚式当日。タキシードに身を包んだ父はどこかそわそわしていました。
「お父さん、よろしくね」
「あ、ああ…」
父は目を逸らしながらも、そっと手を出してくれました。
そして、結婚式が滞りなく終わったとき。
「実は、これから新婦の両親の式を挙げさせていただきます」
司会者の言葉に、父は驚いたようでした。
再婚した両親は、式を挙げていなかったのです。
両親への式は、わたしたちからの感謝をこめたサプライズプレゼントでした。
「こんな話、聞いてないぞ」
突然の話に、父の口調はぶっきらぼうなものになっています。
「せっかくヴァージンロードを歩く練習をしたんだから、お母さんとも歩いてあげてよ」
わたしが言うと、父は照れたのか顔を赤くしました。
母と父が、ヴァージンロードを歩いていきます。
ふたりが式を挙げたらさらに父の「娘」になれる気がしました。
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